いきなり何を言い出すのかと思われたかもしれません。「月が綺麗ですね」という言葉の意味をご存知でしょうか。
こんな逸話があります。夏目漱石がかつて英語教師をしていた時の話です。
ある日、生徒の一人が"I love you"を「我君ヲ愛ス」と訳しました。すると漱石は「日本人がそんな台詞を口にするものか。『月が綺麗ですね』とでも訳しておけ。それで伝わるものだ」と言った
あくまで逸話です。
私は文学おじさんなので、もちろんそういうことをちゃんと承知しているわけですが、今の時代ではあまり通用しません。
こないだの月食の時も試しに「月が綺麗ですね」と言い散らかしてみたものの、誰一人として私の期待するような答えを返してきませんでした。いや、意味は分かっていたけど、ただスルーされただけかもしれません。最近告ハラというのがあるらしいので、その辺でやめておきました。
やっぱり「月が綺麗ですね」なんてこの時代にはもう通用しない。こんな奥ゆかしいことを言う人がこの時代に存在しているわけはないと思っていました。
しかし、最近テレビを見ていたら、なんといるではありませんか。多くの人は気づかなかったかもしれませんが、文学おじさんはすぐにそれと気付きましたよ。
眞子さまと小室圭さんの婚約会見での話です。
宮様とたびたびお会いするようになりましてから、ある日夜空にきれいな月を見つけ、その時思わず宮様にお電話をいたしました。
元々は昨年の話なのですが、私はその時この文言を聞いてなかったんですね。こんなこと言ってたんだと驚きました。
「月が綺麗ですね」とお伝え申し上げたのでしょう。
このコンテクストを知らないと「は?」となってしまいます。まぁ知ってても思うかもしれませんが。
しかし、夏目漱石の逸話を知ってると解釈の仕方が全く異なります。「ははあん」となります。この文脈を読み取れるかどうかは聞き手の教養次第です。
こうしたほんのちょっとの教養があるかないかで人生が変わるかもしれません。このブログを読む女性は少ないと思いますが、このことを知っておいて損はないと思います。私のように「月が綺麗ですね」という現代人もいるかもしれません。
しかし、誰がこんなこと仕込んだのでしょうね。小室さんは自分で考えたのだろうか。もし本当に自分で考えていたのだとしたら大したものです。それが有効かどうかは分かりませんが。
他にも二葉亭四迷は"I love you"を「死んでもいいわ」と訳したという伝説もあります。小説や文学を読むと本当にさまざまな"I love you"の表現があるのだなと感心させられます。
ちなみに二葉亭四迷の名前の由来は「くたばってしまえ」から来たそうです。
ことばって面白いですね。