資産運用と演技力

サラリーマンは高い演技力が求められます。私が特に演技力を必要とする瞬間は、サラリーマン同士でお金絡みの話になる時です。

車を買うだの、マンションを買うだの、だれだれの貯金がいくらあるだの、そういう話になるときはいつでも私は心を引き締めます。恐らく会社のだれもが私が3000万円の資産を有していることを知りません。別に知られてもいいですが、絶対に話がいろいろめんどくさくなるので、できれば避けたいと考えています。

だから、マンションを買うと聞いても「へえ、すごいですね~、私もいつかはほしいです」とか。〇〇くんは貯金1000万円あるらしいよ、と聞いても「まじっすか、ありえないですね」とか。同僚が車を買っても「金持ちだなあ」とか。心にもないことを心を込めて言うように努めています。

「そんなことする前に米国株に投資しろよ、お前は一生社畜やるつもりか」なんてことは死んでも言いません。

たまに、私に向って保険の話などをしてきたり、貯金をするように勧めてくる先輩がいます。そんなときも私は何も知らないふりして「そうだったんですね、独身だし、あんまり考えていませんでした。もっと勉強します」とまるで腹話術のように言ったりしています。

「後輩にそんな話する前にさっさと金ためて米国株投資しろよ、下手したらお前の10倍は資産あるぞ」とか死んでもいいません。

話を聞く限り、明らかに低次元の話をしているので一瞬で論破したい欲求にかられますが、それらをすべて噛み殺して演技を繰り出し続けるのは本当に骨が折れる作業です。

サラリーマン同士でお金の話をすると、資産運用の知識の貧弱さが露呈します。もっとも私のように演技でわからないふりをしている人はいるかもしれません。しかし、そんな人は自ら進んで保険や貯蓄のことを語ったりしません。ある程度投資経験がある人は自ら投資のことを語らないと思います。なぜならそれを語ったところで何のメリットもないことを知っているからです。

やはり日本の社会において資産運用の話をするのはいまだにタブーな気がします。株式投資についてもポジティブなイメージを持っている人は多くない印象を受けます。株は損するからやめておいた方がいいよと諭してくる人が、レバレッジをかけた不動産投資をして借金まみれになっているのを見ると、なんとも言えない気持ちになります。

もっと自由に資産運用の話ができる環境が必要です。そうすれば、もっと社会は豊かになると思います。しかし、それができるようになるのはもう少し先の話なのかもしれませんね。