遊びや気晴らしが世界を変えたという本を読みました。その中でも特に印象に残っているのは、音楽についてです。
音楽はもはや私たちの生活から切り離せない存在になっているように思えます。最近ではスマホでいつでもどこでも好きなだけ聴けますし、あらゆる場所でいろいろな音楽を耳にします。
では、いつ頃から人は音楽を演奏したり、それを鑑賞したりするようになったのでしょうか。数百年前位でしょうか。
それを指し示す一つの証拠は、石器時代の遺跡から見つかった動物の骨でできたフルートです。なんとそれは3万5000年位前のものだそうです。そのフルートが見つかったのはそれが骨だったからで、打楽器などの楽器はもっと前から存在して可能性が高いそうです。
多くの考古学者の考えによると、私たちの祖先は10万年以上前から太鼓をつくっており、音楽の技術は狩猟や体温調節のための技術と同じくらい古い。
この年代配列は、初期人類史のとりわけ大きな謎である。槍と衣服からいきなり管楽器の発明に行くのは、欲求の段階を数段飛ばしているように思える。初期人類は文字や農業を思いつくようになる前に、音楽を奏でるための道具を作っていたのだ。
面白いのは、なせ音楽を奏でる道具をそこまで優先して作っていたのかということです。もっと大事なことがあるでしょう、ということですね。だれかがタイムマシンで過去に行って、楽器の作り方を伝授したというならわかります。
さまざまな専門家がこの問題に対する答えを提案していますが、いまだに明確な答えはよくわかっていません。というか、当時の人たちにインタビューでもしない限りわからないでしょうね。少なくとも人類は、数万年以上前から音楽に強い興味を持っていたのは事実のようです。
音楽は生きていくのに必要なものではありません。タンパク質や水を取らなかったら死にますが、音楽を聴かなくても死にません。それでも、私たちの祖先は音楽を大切にして後世へと遺してきました。もしかすると当時の音楽は、今で言えば「遊び」のようなものだったかもしれません。仕事そっちのけで遊んでいた。しかし、その「遊び」が今の世界を創り出しました。
あの最初の骨笛によって作られた音が耳の中で鳴り響いて以来、人々は新しい響き、新しい音色、新しいハーモニーを追いかけている。そしてその追求が数えきれないほどの技術の躍進につながり、音楽とは全く関係のない方法で現代社会を築いた。
今でもいろんな娯楽を生み出すことはできると思います。昔の人が音に魅せられて楽器を作ったように、私たちも仕事そっちのけで、何か猛烈に心惹かれるものに没頭したら何か生み出せるかもしれません。しかも今ならスマホとネットで世界中に一瞬で拡散できます。
ちょっと前まで「登山」という概念自体もなかったらしいです。自然を楽しむイノベーションなんか産業革命以降の最近の話です。今は当たり前だと思っている娯楽が、ちょっと前までは存在すらしていなかったことに気づかされて衝撃を受けました。
大人だって遊ぶことが大切なんだなと思わせてくれる本でした。遊びよりももっと大切なことはいくらでもあるでしょう。でもその遊びが世界にイノベーションをもたらすかもしれないのです。