私は以前どんな仕事をしていたのか(第7回)

彼女に選考結果を聞くか、聞かないか、それが問題でした。

あらすじ

2007年、就活を始めた牛は、唯一受験した新聞社の選考に落ちて挫折。その後海外で働くことを志し、半導体の海外営業職の内定を得た。最終面接で一緒になったXさんの選考結果はどうだったのか、、

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海外営業の内定を得ることができましたが、最終面接で一緒になったXさんがどうなったかはとても気になりました。

しかし、これはとてもセンシティブな問題です。

相手に選考結果を聞くのは良いですが、もし相手が受かっていなかったら、どう反応すれば良いのでしょうか。

「実は落ちてたの。。」

「いや、実は僕も落ちててね。。」

という嘘をつくことにしようか。

自分が受かっていて、相手が落ちている状況が最悪です。

そのフォローアップの仕方について、大学は何も教えてくれなかったし、どうするのが正解なのかも全くわかりませんでした。

大学が一緒だから今後キャンパスで会うかもしれません。せっかく知り合った数少ない大学の知り合いと気まずくなるのは嫌です。

「ほらほら、あの人を見て。就活の最終面接でたまたま一緒になったんだけど、その後いきなり合格自慢してきたの。気持ち悪くない?」

という風にお友達に囁かれたら一巻の終わりです。

ただでさえ友達がいないのに、もっといなくなったらどうすればよいのでしょうか。

うん、やめとこう。

大学での奇跡的な遭遇を信じてみることにしました。

筋書きはこうです。

たまたまばったり大学で会う。

「やぁ、久しぶり、そういえばこないだの選考どうだった?」

「受かってたよー。牛くんは?」

「受かってたよ、どうする?」

「その会社に行くことに決めたの」

「おぉー!」

これです。これが安全です。

そんなものとっとと聞けよ、男だろ!

と思うかもしれませんが、私の性格上、これは大変に難しい問題でした。

向こうから連絡が来ることはないか、という淡い期待を抱くことすらありました。

しかし、相手も状況は同じです。

地雷が埋まってるかもしれない場所に自ら進んで足を踏み入れるでしょうか。

入社すればお互いの結果がわかるのです。

入社式で一人の女性とすれ違い、声をかけられる。

「あっ、ねぇ、あの最終面接で会った、、牛くんだよね?私のこと覚えてる?」

「あれ、もしかして、、Xさん?」

この展開も悪くありません。

だから今、過剰なリスクを取る必要はない。

このまま静観していよう。

それが私たちの選んだ選択でした。

それからどのくらいの時間が経ったでしょうか。

大学でばったりたまたま会わないか、、、と目を凝らしながら歩き、

メール受信BOXの未読メールに日々胸をときめかせながら、大学生活を送りました。

しかし、私が当初想定していたような出会いも連絡も全くありません。

彼女が受かったのか、受からなかったのか、それが問題だ。

どうしても結果が気になりました。

皆さんも気になってますよね。

だから私は意を決して彼女に聞いてみることにしたのです。

たとえ結果はどうであれ、お互いの状況を報告し合っておくことは何も悪いことではない。

もし変な感じになってしまったら、それはそれで仕方のないことではないか。

何を自分は恐れているのか。

「うおおおぉぉぉ」

バシンバシンバシン

勇気を振り絞り、メール送信ボタンをプッシュ。

「やぁ、久しぶり、こないだの選考どうだった?」

メールが空を飛び、メール送信完了。

昔のメールは趣がありました。

メール受信中のドキドキ。

受信BOXの未読メールにワクワクしながら受信BOXを開けると、

好きな人からの待ちに待ったメールではなくて、友達からのどうでもいいメール。

お前、、、

このタイミングでくんなよ。

という甘酸っぱい思い出は誰しもあったはずです。

今は一瞬でメッセージが交換でき、既読スルーにも慣れ、LINEをすればおじさん構文だと揶揄される。

あのドキドキの間は良かった。

こうして16年経った今でもあの時のことはよく覚えています。

もう彼女からどんなメールを受け取ったか、その後のやり取りの詳細も覚えていません。

ただ、メールをやり取りして、お互い喜んでいたような、そして安心したような。

そんな記憶がちゃんと今でも残っています。

こうして、最終面接でたまたま一緒になった同じ大学のXさんが、私の記念すべき最初の同期になったのでした。