今振り返ると記憶が曖昧で、あの観光は自分が勝手に作った都合の良い記憶なのではないかと思うこともあります。
あらすじ
2007年、就活を始めた牛は、唯一受験した新聞社の選考に落ちて挫折。その後海外で働くことを志し、半導体の海外営業の最終面接に臨む。偶然一緒になった同じ大学のXさんを面接の後、観光に誘った。
バックナンバーはこちら
最終選考は確か午後だったので、ほとんど観光をする時間はなかったと記憶しています。
というよりも、ほとんど観光をする時間がなかったから、おそらく面接は午後だった、と考えた方が正しそうです。
最終面接の会場から近い観光名所を一か所だけ、閉門時間ぎりぎりに滑りこむようなプランでした。
今思えば、あれはもう16年も前になるのかと思うと、私もずいぶん年を取ったなと感慨深い気持ちになります。
当時の記憶も予想以上に曖昧になっていることに気が付きました。
どこに行ったのかは明確に覚えていないし、何を話したかも覚えていません。
そもそもこの記憶自体自分の作り話だったらどうしようと思うことすらあります。
しかし、ある一つのシーンだけは今でも明確に覚えています。
観光の終盤に甘味処を見つけ、
「あそこでスイーツ的なものでも食べませんか?」
そこで甘い何かを食べながら、お互いの話をした。
だから、これは本当に起きたことのはずですが、それも幻想だったらどうしよう。
できることなら一度答え合わせをしてみたいものです。
最終面接の後のこと覚えてる?
彼女とは面接で初めて会いましたが、短時間で打ち解けられた(と個人的には思っているけど相手はどうだったかはわからない)ような気がしました。
もし彼女も同じ会社に受かって、もし一緒の会社に行けることになったら、これはなんだかとても心強い。
就職内定者が入社前に知り合って、それなりの友好関係を築くということはあるでしょう。
しかし、最終面接でたまたま同じ大学の人と出会い、そのまま同じ会社に行くというのは結構レアなケースではないか。
彼女にとっては、この会社も複数ある候補のうちの一つかもしれないので受かっても入社するかはわかりません。
でも同じ会社にいけたらそれはとても良いことだと直感的に感じました。
観光後、どのように別れ、どのように家に帰ったかはもう記憶にありません。
次の記憶は、面接から数日が経ち、大学で急に電話がなった時でした。
こ、これは、、、
見知らぬ電話番号。
とある記憶がフラッシュバックします。
「A先輩、きました、きました、電話きましたー!出ますよ、出ますよ」
先輩は下を俯いたまま、頷いているように見えました。
興奮した私は携帯を手に取り、携帯を開くとそこには、、、
あたりにA先輩がいないかどうか念のためチェックしてから、電話に出る。
「〇〇社人事部の〇〇です。」
「はい。(きたー)」
「先日は面接に来て頂きありがとうございました。選考の結果、牛さんに内定を出そうと思っているんですが、、」
「はい。。(なんかすごくこわい)」
「今この電話で入社することを決めてくれたら内定を出せるんですが、そうじゃないと内定を出せないんですよねぇ、、」
「はい。。。(こ、これが、オワハラか、今やったら叩かれるやつ)」
「今進んでる選考があったら全部キャンセルして、弊社に入社する意思があるか今この電話で確認したいのですが、、」
というような電話が来ました。
私は他に選択肢がなかったので、そこまで困ることはありませんが、なかなか高圧的な態度で少し怯みました。
私が就活していたころはどの会社もそうだったのかもしれません。
しかし、私に他の選択肢はないのです。
「はい、よろしくお願いします!」
「わかりました、それでは今後の手続きなどについてはまた追って連絡しますね」
とさっきまでの凄みはどこへやら一気に和やかな雰囲気になり、このタイミングでホッとした気持ちと嬉しさが込み上げてきました。
全然知らない会社でしたが、こうして内定を頂けるのは嬉しいものです。
どこの会社でも内定をもらうというのは自分が認められたような気がして、嬉しい気持ちになります。
これでようやく社会人になれるんだ。
「お金をもらいながら海外で働く」夢の生活に向けて大きな一歩を踏み出しました。
半導体の海外営業だ。
何をやるかよくわからないが、雰囲気は凄そうじゃないか。
正気に返った私はあることを思い出します。
Xさんは、受かったのだろうか。