UTMBの装備について説明します

前回はUTMBというレースの概要について説明しました。今回は装備とその注意点についてお話ししたいと思います。

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UTMBシリーズの多くは100㎞を超えるものがメインで、標高も2500mくらいの山を登っては下りたりを繰り返します。

朝晩の気温の変化は激しく、山なので当然天気も急変します。

このため、レース中は指定された装備品を携帯することが義務付けられています。

マラソンのように、ランパン、ランシャツだけで参加することはできません。

ゼッケンをもらう時もこの装備チェックがありますし、レース中も必携装備品がないとペナルティや場合によっては失格になります。

こんな装備が必要です。

必携装備

  • コップ
  • ヘッドライト×2+予備バッテリー
  • 携帯(海外ローミング可)
  • テーピング
  • サバイバルブランケット
  • 1Lの水
  • 食べ物(800kcal以上推奨)
  • 雨具上下(ゴアテックス系推奨)
  • セカンドレイヤー(綿以外の長袖)
  • 防水手袋
  • 帽子
  • 耳まで隠せる帽子やバンダナ
  • 長ズボンやタイツ
  • 以上の装備を携帯できるバッグ

 

そしてさらに暑い天気用と寒い天気用のオプションがあって、レースの天気によって以下の装備が必要かどうかも決まります。

ヒートウェイブキット

  • サングラス
  • サハラキャップ(首とかまで隠せるひらひら付きの防止)
  • 日焼け止め
  • 水2L

コールドウェザーキット

  • サングラス
  • 温かいもう一枚のシャツ
  • ちゃんとしたランニングシューズ

参考:UTMB® - Prepare and test your equipment

結構ちゃんとしてますよね。

でもそれは当たり前で、万が一体調不良やケガで動けなくなった時のために、救助が来るまでなんとか粘れる装備を持たなければならないということです。

でもできるかぎり荷物は少なくしたい。

ここに道具選びの面白さがあります。

装備にこだわればこだわるほどキリがなく、そら軽くて機能が良いものは高いです。

大体はお金で解決できるのだけど、ここは少し頭を使いながら自分にとってのベストを模索する。それが楽しいです。

初心者ほど荷物を軽くしようとするのですが、これは全く逆でちゃんと自分の経験を踏まえて(自分で実験して)厳選した装備をちゃんと持っていくべきです。

 

例えば、私はどんな天気でも以下の装備は絶対に持って行きます。

  • サハラキャップ
  • ダウンジャケット
  • 替えの乾いたアンダーシャツ

山は晴れると日差しがめちゃくちゃ強いです。乾燥しているせいか、なぜか知らんけど、あの差すような日差し。これが顔とか首に直接当たると、それだけで体力を消耗しますし、熱中症のリスクが激増します。

一方、夜になると一気に冷え込みます。夏とはいえ、2500m位になれば5~6℃くらいになりますし、これに雨や場合によっては雪になることもあります。

特に気を付けなければならないのは、身体を濡らした状態で気温の低い場所に留まる時です。一気に体温が奪われ、低体温症になるリスクが高まります。

ですから、ちょっと余分だと思う位な防寒と着替えは持っておくことをおすすめします。疲労+低体温が重なると一気に動けなくなります。荷物を濡らさない工夫も忘れてはいけません。

次は水分についてです。

私の場合、水分は1.5L分(500ml×3)のボトルというかフラスクを持っていきます。

2つ分は、エイドと呼ばれる休憩所でフル充填し、もう1つは予備で持っておきます。次のエイドまでの距離が長い時や暑い時にもう一つ使うためです。私の場合、大体これで足ります。

[サロモン] ハイドレーション SOFT FLASK 150ml/5oz Blue
 

トレイルランニング用のリュックは、前方にそのフラスクが収納できるようになっています。左右500mlずつ、合計1Lくらいが普通ですね。予備のもう一個は小さくして背中に収納します。

次に食べ物ですが、これも人によって様々なので自分で最適なものを選ぶのがいいでしょう。10㎞~20㎞毎に休憩所があって、以下のような食べ物も提供されます。

  • バナナ
  • オレンジ
  • クッキー
  • チョコレート
  • パン
  • サラミ
  • チーズ
  • パスタの細切れが入ったスープ
  • パスタ(エイドによる)
  • 炭酸水
  • コーヒー
  • 紅茶
  • コーラ

 

チーズとかサラミとかが美味しいのですが、もたれそうなので積極的にいけません。

エイドよってはパスタが出ますが、これがビビるくらいまずかったです。

大量生産していたので、多分味付けとか何かの分量を間違えていたのだと思います。

そして、炭酸水に注意。水だと思って炭酸水だといろいろトラブります。

このようにエイドで食事はできますが、その間をつなぐ補助食を携帯する必要があります。その間だけで5~6時間の山歩きが強いられることもあるのです。

私が愛用しているのはこれです。

持久系アスリート専用粉飴ジェル 40g×20本

持久系アスリート専用粉飴ジェル 40g×20本

 

一番コストが安くて、パッケージが縦長なのがいいです。シンプルなのも気に入っています。中にはリンゴ味とかはちみつ味とかいろんな種類のジェルがありますが、後半嫌になっちゃうんですよね。最初はめちゃくちゃうまいんだけど、長続きしない。恋愛と一緒や。

だから、できる限り無味に近いものがいいですが、粉あめはさっぱりしていていいです。

これ一つで炭水化物25gなので100kcalです。大体30本位持っていきます。大体1時間に一本位ですが、徐々に間隔が空いてしまったり、気持ち悪くて後半食べれなくなるので、大体30本位がちょうどいいです。実際に以前UTMBを走った時には27個しか使いませんでした。

次に柿の種です。別にビール飲むわけではありません。

ジェルが甘いので後半は甘いのが嫌になってしまいます。そんなとき柿の種は完璧です。適度にしょっぱいし、ピーナッツが脂質を多く含むため、最高のエネルギー減になります。小分けのものをいくつか忍ばせておくとよいでしょう。ピクニック気分です。

普段の生活の敵となる高糖質は、レースの味方。

あと塩分補給も大事です。

おすすめは、塩熱サプリの業務用個包装です。

個包装のものは、アマゾンではないと買えません。飴みたいにすべてのタブレットが個別に包装されているのがいいです。

これ以外だと、パッチ袋にタブレットがそのまま入っているタイプか錠剤が入っているようなパッケージです。いずれもちょっと嵩張るのがデメリットで補給までに工数もかかります。

一方、個包装なら濡れるリスクもなく、いろんなところに収納でき、補給も簡単です。

先ほどのジェルもそうですが、一番取り出しやすいところに収納するのがポイントです。レース途中では、補給すら億劫になってしまうことがあります。

そうなると、補給すべきタイミングがどんどん遅れるため、エネルギー切れや塩分不足によるパフォーマンス低下につながります。

以前塩分不足のためか、身体全身が攣るという絶望的な状態に陥ったことがあります。

地面で七転八倒してたので、周りの選手に相当心配されました。

脇腹とかも攣るのね。片方攣ったら、次は反対。を繰り返しました。その時、他の選手にこれを飲みな、と塩系サプリを渡されて復活を遂げたことがあります。

だから、補給はタイムリーに、すぐに出せるところに入れておくことがポイントです。

あと、眠気対策のブラックブラックガム。これ効きます。

ロッテ ブラックブラックガム 9枚×15個

ロッテ ブラックブラックガム 9枚×15個

 

食べ物関連で言うと、胃薬も必需品です。

長距離レースを完走するのに一番大切なことは、胃を労わることです。

経験がない方はピンとこないかもしれませんが、長時間動いていると胃がやられます。

これは複数要因があります。走って胃が揺れる、ジェルとかでやられる、水分の取りすぎ、などなど。

食べられないとエネルギー補給ができないので、動けなくなります。本当に調子が悪いと水分すら取れなくなります。

ですから、補給を続ける(生命を維持する)ために、胃を良好な状態に保つことが超重要なのです。

私は胃の調子が悪くなくても予防的に胃薬を飲むこともあります。胃がだめになってレースをリタイアしてしまったこともあったからです。

こういうほんのちょっとした心がけがレースの結果を左右することがあります。

胃薬一つで全然違う。それが面白さでもあります。

 

このように装備だけでこんなに長々となってしまいましたが、言いたいことは、自分の経験を踏まえて最適化しましょう、ということです。

常にトライアンドエラーです。

雨具だって、ちゃんと大雨の時にそれを着て走ったことはありますか?という話です。

ランニングウェアを全部濡らして、気温5度で走ってみたことありますか?

水に濡れた足で歩き続けるとどんな悲劇が待ち受けているか知っていますか?

レース後半の柿の種の美味しさを知っていますか?

インスタント味噌汁の味噌をそのまま吸いたくなったことはありますか?

自分の失敗を踏まえて、私は装備や補給を最適化してきました。

まだまだ改善の余地はありますし、これには終わりがありません。

そしてこれが他の人に必ずしも使えるとも限りません。

失敗をする、次は対策をして、成功する。

この繰り返しなんですね。だから、毎回いろんな発見があって楽しいです。

日々の人生もそうだと思います。ちょっとした課題は常に身の回りにあって、ほんの少し工夫をしてみたら、案外ものごとはうまく運ぶかもしれません。

あぁ、会社とか意味ないかもな、辞めてみよ、とかね。

このレースを通じて、多くのことを学ぶことができました。

自分にとって何が必要で、何が不要なのか。

ほんの小さなリュックサック一つでこんな冒険ができる。

そのことを知っただけで、生きることがとても楽になったのです。