「神学でこんなにわかる『村上春樹』」の感想文

神学でこんなにわかる「村上春樹」というご本を読みましたので感想文を配信させていただきます。ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます。

この本はキリスト教神学の視座から、村上春樹氏の長編「騎士団長殺し」を佐藤優氏が徹底的に読み解きます。

欧米人は「ハルキ」をこう読んでいる! 世界的共感の源を解き明かす画期的作家論。
村上作品をキリスト教神学で読めば、ページから違う声が聞こえてくる。悪の問題に正面から取り組んだ『騎士団長殺し』を「不可能の可能性に挑む」「神なき時代の愛のリアリティ」のキーワードで詳細に読みほぐし、最新作『街と~』に至る展開まで鋭く考察。神学と海外事情に精通する著者だから書けた、発見と驚きの書。

だそうです。

そういえばこないだ佐藤優氏がNHK出てましたね。テレビには出ないキャラだったのでびっくりしました。

私は村上春樹氏も佐藤優氏も好きなので、読むしかないと思っていましたが、ただ村上春樹が好きな人が読もうとすると結構苦労するかもしれません。

なぜなら、本書は神学的な視座から作品を分析しており、内容がかなり難しいからです。

引用がかなり多く、そこに佐藤氏が分析とご自身の経験などを織り交ぜた解説が入ります。

あまりにも引用が多いので、これ一冊で「騎士団長殺し」のおさらいができるくらいです。

私は一度「騎士団長殺し」読んだことがありましたが、しばらくたってから本書を通して読み直すと、あれ、こんな物語だったかな?と思うこともあり、いかに自分の読みが適当であったかを思い知らされます。

分量もあるので簡単には読めませんが、キリスト教神学的視座から村上春樹氏の作品を読み解くことに興味がある方は手に取ってみてください。

読んでてよくわからないところはたくさんあったのですが、私は「騎士団長殺し」に出てくる「免色」というキャラクターが結構好きです。

「私は思うのですが、大胆な転換が必要とされる時期が、おそらく誰の人生にもあります。そういうポイントがやってきたら、素早くその尻尾を掴まなくてはなりません。しっかりと握って、二度と離してはならない。世の中にはそのポイントをしっかり掴める人と、掴めない人がいます。

騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(上)―(新潮文庫)

免色さんはかなり名言が多いですね。

右か左どちらかに行けと言われたら、いつも左をとるようにしています。それが習慣になっています

騎士団長殺し―第1部 顕れるイデア編(上)―(新潮文庫)

佐藤優氏は、免色は悪魔だと言っています。私は悪魔が好きだったのか。

この台詞からもそれがが窺えます。

右はright(正しい)という意味があるように、右と左にはそれぞれ別の意味があります。

ん?と思うような謎めいたセリフやシーンを分析していくと、浮かび上がってくるものがあるということですね。

正直本書を読んでいると、私の知識不足から理解できなかったり、ほんまかいな、と思うことはありましたが、文学はこのようにさまざまな読み方ができるんだな、と改めて驚きました。

村上春樹作品の背後には思いもよらない物語が隠されているのではないか、、という気にさせられます。

それ以外のポイントとしては、佐藤優氏の豆知識が面白いです。

免色が東京拘置所に勾留された経験について話すことがありますが、佐藤優氏も経験があるので、「免色の心情は筆者も肌感覚でわかる」とか言ってて、本当に何でも知ってるんやなと思いました。

免色はインテリジェンスオフィサー(スパイみたいなやつ)的な要素がありその部分も佐藤優氏と共通する部分があるようで、その話も面白かったです。

免色さんは悪魔かもしれないけど素敵なキャラクターです。

東京拘置所の閉鎖空間の壁の話や様々な穴など、壁や穴は村上春樹氏の一貫したテーマです。

本書の最後には最新作「街とその不確かな壁」に関するあとがきへと繋がっていきます。

ということで、個人的には難しいところはすっ飛ばしましたが、そこそこ楽しめました。

やはり背景知識があると、文学作品をより楽しむことができるんだろうなぁ、、ということがよくわかりました。

だから有名な文学作品は年をとってから読み直すと新鮮な面白さがあると言われるのですね。もう一度騎士団長殺しをじっくり読み直してみようと思いました。