「エマニュエル・トッドの思考地図」の感想文

軽い精神障害というのは、もしかすると研究にとってのアドバンテージになる可能性もありますね。自分の社会やすぐ目の前にある現実から少し外れたところにいるのですから。そしてそのことが大切なのです。

エマニュエル・トッドの思考地図 (単行本)を読みました。冒頭は本書からの引用です。

初めてエマニュエル・トッドの本を読みましたが、なかなか面白かったです。

プロファイルをアマゾンから引用します。

1951年フランス生まれ。歴史人口学者。パリ政治学院修了、ケンブリッジ大学歴史学博士。家族制度や識字率、出生率などに もとづき、現代政治や国際社会を独自の視点から分析、ソ連崩壊やリーマン・ショック、イギリスのEU離脱などを予見したことで広く知られる。おもな邦訳書に、世界的ベストセラーとなった『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』のほか、『世界の多様性――家族構造と近代性』『最後の転落――ソ連崩壊のシナリオ』(以上、藤原書店)、『シャルリとは誰か?――人種差別と没落する西欧』(文春新書)などがある。

本書は思考に関する本です。少し難しそうでしたが、立派な人たちはどのような考え方をしているのか気になったので読んでみました。

一言で表すのは難しいですが、こんな感じでしょうか。

  • 圧倒的な読書量が必須
  • 幅広い分野を横断的に読む
  • その膨大なデータから何かを発見する
  • アウトサイダーになれ

印象的なのは、「思考=読書」みたいな言い方で、とにかく読んで、読んで、読みまくった。というのがひしひしと伝わってきます。読むこと自体が思考だ。みたいな。

まさにフランス人版佐藤優だ、と思いました。

私が特に印象に残ったのは、社会から外れた部分を持つことが大事だということです。

そうすると、その社会のことがよりよく見えるようになります。

ちょっと仲間外れに感じるような場所にいた方が、物事の道理がよくわかるというのは経験上よく理解できます。

ちょっと自慢話になりますが、以前私はサラリーマンを10年間もやっていたことがあります。

 

サラリーマンをやっている時には気づかなかったことに、今はっと気づいたり、日々感じるちょっとした生きづらさが、「これが諸悪の根源だ」などと思ったりすることがあります。

アイディアが湧くということは、日常のルーティンから出るということでもあるのです。それは、他の誰にも見えていなかったことが見えるようになることです。

エマニュエル・トッドの思考地図 (単行本)

だから、人とは違う環境や場所にいた方が独創的なアイディアを授かる可能性は高まると思います。実際にエマニュエル・トッド氏も鬱状態の時にアイディアが浮かぶということを言っています。

アイディアが浮かぶのは鬱状態に陥っているときなのです。元気なときは絶対、何一つ浮かびませんから。不幸な天才というイメージを作りたいわけではありません、別に不幸なわけでもないですから。何か突破できた、と感じるとき、「ああ、やっぱり。今精神的に落ちているからだな」と納得することはよくあるのです。

エマニュエル・トッドの思考地図 (単行本)

意外と辛い思いをしている時の方が、素晴らしい考えが浮かぶのかもしれません。

私も辛い思いをしていた時の方が名作を世に送り出せていたような気もします。

ですから、今辛い思いをしている人も、社会から外れて、鬱になったときこそがチャンスだ、と思えるようになりましょう。

その時が思考のゴールデンタイムです。

エマニュエル・トッドの思考地図 (単行本)

エマニュエル・トッドの思考地図 (単行本)