「限りある時間の使い方」の感想文

「限りある時間の使い方」というご本を読みましたので感想文を配信させて頂きます。ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます。

結構人気な本みたいなのですでに読まれた方もいらっしゃるかもしれません。

タイトルが「限りある時間の使い方」なので、時間を有効に使う時間管理術とかの自己啓発本かと思うかもしれませんが、全く違います。

むしろ逆です。

人生の時間は限られていて、その中の限られた範囲しか自分はコントロールできないのだから、その現実を受け入れて、できることを粛々とやっていくしかなくね?みたいな内容でなんだかホッとしました。

確かにそういう考え方をすれば気持ちが楽になるかもなと思いました。

最近は何かと生産性だの、タイパだの、短時間でより多くのことをすることを讃える風潮があり、天邪鬼な私はその考え方に違和感を持ち始めました。

多くのビジネスパースンは、せっかくの休みの日も何も予定がないのはもったいないからと何か無理やり予定を入れるけど、いざその予定があるとだるい、なにやってんだ俺は(私は)、、みたいな経験をしています。

時間を何かに使わないと損した気分になる。

よく考えれば謎な思考に現代人は囚われており、いや、呪われており、時間を活用しようとするあまり、逆にどんどん活用できなくなっているというわけです。

時間に追われる日々を過ごし、不幸になっています。

例えば、勉強について考えてみましょう。

毎日のノルマでこれとこれとこれをやろう、とリスト化します。しかしやってみると思いのほか難しく、それらが全てこなせなかったら残念な気持ちになるはずです。

これではダメだと色々なものを犠牲にして辛い思いをしながらなんとかその日のノルマを仕上げようとする。

何ならノルマをこなすことが目的になっていて、肝心の勉強した内容が頭の中に全く入ってないよう、、という人もいるでしょう。

私のことです。

このように、現代人は生産性を上げようとするあまり時間に追われ、幸福になるために時間を管理しているつもりなのに、逆に不幸になっていくというパラドックスに苦しめられています。

それに待ったをかけてくれるのが本書です。

いや、そんなさ、1日にできることなんか限られてるんだし、君の能力だってたかが知れてるんだからさ、まずはそれをそのままちゃんと受け入れようよ。

で、そこからできることを一つ一つやってこう。その方が人生うまくいくものさ。

ということをざっくり言ってくれています。(間違ってたらごめん)

生産性オタクのみなさまにぜひお読み頂きたいです。

私も少しでも生産性が高い方が良いと思いがちなので、有意義な時間の使い方ができないと残念な気持ちになる方です。

しかし、その考え方に固執するとゆっくり何も考えずにボーッと過ごす時間がもったいないと思うようになり、なるべくそういう時間を減らして勉強をしよう、とか、本を読もうとか、意識高い系みたいなことをつい考えてしまいます。

しかし、それが罠だったというわけです。

このせいで、何か一つの対象に没頭することができなかったり、長時間何かを継続することができなくなってきてしまったような気がするのです。

じっくり本を読めないとか、長い映画を見れないとか。

本書の中で紹介されていた印象に残っているエピソードを紹介しましょう。

ハーバード大学で美術史を教える先生が次のような課題を出すそうです。

「美術館に行って絵画か彫刻を一つ選び、3時間じっと見る」

いかがですか。

ご想像の通り、多くの人にとってはめちゃくちゃ辛いです。

しかし、これをやっていると様々な雑念が一通り過ぎた後に、徐々に作品と一体化し、それまで気づかなかったディテールに気づくという経験をするそうです。

なんとなくわかる気がします。

現代社会はスピードを重視するあまり、見逃しているものも実はたくさんあるのではないか、ということを思い出させてくれます。

確かに短時間でより多くの成果を上げることは大事です。資本主義はそれによって成長してきたと言っても過言ではありません。

しかし、スピードや生産性を重視するあまり、失ってしまったものも多くあるのではないでしょうか。

限りある時間の中で、自分が今すべきことは何なのか。もう一度自分に問いかける機会を与えてくれる良い本だと思いました。