オリンピックボランティアで役員に詰められる

「私の指示通りにしなさい!」物凄い剣幕で私に迫る。私の1.5倍の大きさはあろうかという巨大な役員の前で私は呆然と立ち尽くしていた。

先日オリンピックボランティアの業務が過酷すぎることを告白しましたが、よくまとまっている新聞記事があったので紹介します。

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一部記事を引用します。

「オリンピック・ファミリー・アシスタント」(OFA)

 東京都心の高級ホテルに滞在する国際オリンピック委員会(IOC)や各国・地域のオリンピック委員会(NOC)役員の「お世話係」として案内や通訳などを務めるボランティアはこう呼ばれ、ホテルから会場まで同行する。

 「私の車はまだか」。ある案内役は、NOC役員が自国選手の激励のためにホテルから競技会場に向かう際、送迎車の到着が30分~1時間遅れ、案内役にこう詰め寄る光景が日常茶飯事になっていると証言する。

これは事実ですね。役員専用の乗降場がカオスになっており、1時間位待たせるケースがありました。そして当然のことながらそれに不満を持つ役員の方もいらっしゃいます。

なぜこんなことになったかというと当初使う予定だったアプリが全く使いものにならなくなったからです。

当日の予定、配車時間、目的地をOFAと役員と運転手でシェアするT-TOSSというアプリが全く使えない事態となりました。

日本アプリ弱すぎでしょう。

大事な局面で開発するアプリは悉く使えない印象です。

そこで出てきたのが日本の伝統芸能「紙頼み」です。

アプリは、各国の競技団体役員らに付きそうボランティアらに貸与されたスマートフォンに入っており、ボランティアは組織委が示すスケジュールに従って、アプリを使って送迎車を予約する。

 しかし、一部で不具合が起き、ボランティアが紙の伝票に翌日の配車時間を書くなどして車を手配しているケースがある。

【独自】選手ら輸送アプリ、トラブル相次ぐ…運転手や配車は「紙」頼み : 東京オリンピック2020速報 : オリンピック・パラリンピック : 読売新聞オンライン

これら記事を読んで僕は少し安心しました。

オリンピックファミリーの役員に詰められているのは僕だけではないのだと分かったからです。

これは何の権限もないボランティアはとても辛いです。なぜなら私たちも「知らんがな」だからです。しかし、私にできることは謝ることしかできません。

ソーリーソーリー

ある意味仕事だった方が楽かもしれません。

先方の要望に応じて手配し、多少をルールを逸脱しようが、相手が快適に思うように手配を柔軟に変えることができる。車を換えてほしければ換える、夜遅くまで対応してほしければ対応する。しかし、ボランティアには何も権限はない。

役員の詰めを全身で受け止める。

あぁボランティアをやってよかった。

朝からとある国の役員に帯同し、疲れ果ててホテルに戻る、詰所に戻ると、別の国の役員が18時から車が必要だと要求しているらしい。

大変なことだ。今日は疲れたから帰りま。。

リーダーがつぶらな瞳で僕を見つめる。

「やれやれ」

 

役員秘書から指定された場所に向かうが一向に役員は出てこない。本当にここで良かったのか心配になる。秘書に連絡を取るが、それで合っているらしい。

待つこと一時間。圧倒的な雰囲気と巨体の役員が出てくる。あれだ。

「車をもう一台用意しなさい。あと今日は遅くなる」

「できません。私たちの稼働時間は9時間でそれを超えてしまいます」

「そんなのは知らない。とにかく私の言う通りにするんだ!」

あぁ

ある案内役によると、NOC役員らは金メダル獲得を祝う会に出かけることがあると言い夜も配車を求められるという。案内役は1日最大1時間までとされており、超えると現場を離れられるが、「お祝いだから」と言われると断りにくいという。

「車はまだか」五輪ファミリーに迫られボランティア困惑 - 東京オリンピック:朝日新聞デジタル

あぁ懐かしい。いつぶりだろうか、この気持ち。

冗談でボランティアがサラリーマン時代の仕事をフラッシュバックさせたらどうしようと言っていたが、それが現実になりそうだ。

喉がキュッとなった。

ボランティアをやって本当に良かった。

やってなければオリンピックの役員に詰められたり、言い返したりする経験なんかできなかっただろう。

紙に感謝。

「運転手さん、僕たちは24時まで拘束される可能性があります。大丈夫ですか?」

「そうですか、、私の勤務時間は22時までです。それを超える場合は上司に報告が必要で、23時を超えてしまうと終電がなくなるので困ります。」

「そうですよね、実は私も同じです。分かりました。私は今から二人が無事に22時までに帰る方法を編み出します。」

「助かります。でも牛さん、僕は24時までになっても大丈夫です。どうしてもだめなら僕を使ってください。私は牛さんの指示に従いますから」

僕は胸が熱くなった。

「任せてください、銃を突きつけられても常に146通りの解決方法があるんです」